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最高裁判所第三小法廷 昭和52年(行ツ)84号 判決

上告人 光嶋虎夫

右訴訟代理人弁護士 竺原巍

山本毅

被上告人 竹内孝士 〈ほか二名〉

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人竺原巍、同山本毅の上告理由一の1について

地方自治法二四二条の二第一項四号によるいわゆる代位請求訴訟は、地方公共団体が、職員又は違法な行為若しくは怠る事実に係る相手方に対し、実態法上同号所定の請求権を有するにもかかわらず、これを積極的に行使しようとしない場合に、住民が地方公共団体に代位し右請求権に基づいて提起するものである(最高裁昭和四六年(行ツ)第九〇号同五〇年五月二七日第三小法廷判決・裁判集民事一一五号一五頁参照)。右のような代位請求訴訟の構造にかんがみれば、右訴訟の被告適格を有する者は右訴訟の原告により訴訟の目的である地方公共団体が有する実体法上の請求権を履行する義務があると主張されている者であると解するのが、相当である。被上告人らの主張によれば、本訴において同人らが訴外勝央町に代位して行使しようとする請求権は上告人自身の不法行為により同町に加えた損害に対し同町が有する賠償請求権であるというのであり、したがって、本訴において被告適格をもつのは、被上告人らにより右損害を賠償する義務を負うと主張されている上告人であることが明らかである。これと結論を同じくする原審の判断は、結局、正当であり、論旨は採用することができない。

同一の2について

本件記録によれば、被上告人らの本件監査請求は、上告人は不法行為により訴外勝央町に対し損害を被らせ同町に対し損害賠償義務を負うところ同町はその請求をすることを怠っているから損害賠償請求等適当な措置を求める、というのであり、これによってみれば、被上告人らの監査請求は、地方自治法二四二条一項所定の不当又は違法に財産の管理を怠る事実を改めるために必要な措置を構ずべきことを求めていたものというべきである。そうすると、右規定による怠る事実に係る請求については同条二項の適用はないと約すべきであるから、被上告人らの本件監査請求については所論の期間徒過の違法はない。それ故、これと結論を同じくする原審の判断は、結局、正当であり、論旨は採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 江里口清雄 裁判官 天野武一 裁判官 高辻正己 裁判官 服部高顯 裁判官 環昌一)

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